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弁護士が教える離婚に関する法律のこと3 離婚する前の法律のルール|婚姻費用

ライター 押見和彦

2009年弁護士登録。宮城県仙台市で4年3ヵ月間「ひかり法律事務所」で経験を積んだ後、目黒総合法律事務所に移転。現在は主に家庭のトラブルの予防と安全・円満な解決のため離婚案件を多く取り扱い、その他セミナー等の活動をしている。

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皆様、お久しぶりです。弁護士の押見和彦です。
さて、いつもマイペースな更新で申し訳ありません。今回はいよいよ法律の制度のお話です。「離婚をする前の法律のルール」ということで、今回は「婚姻費用」という制度について詳しくお伝えいたします。

婚姻費用とは

離婚に踏み切るための準備をしたら、今度は自分の権利を知りましょう。
どんなに仲が悪くなってしまっても、離婚するまでは法律上は「夫婦」であって家族です。法律上、家族であればお互いに助け合って扶養する、という義務が生じています。つまり、家族である限りは収入に応じて生活費をきちんと貰える(渡す)ということになるのです。

離婚後、親が子どもに渡す生活費が「養育費」です。「婚姻費用」は離婚をする前に、夫が妻と子どもに渡す生活費だと思っていただければ分かりやすいと思います。収入が変わらない限り、必ず「婚姻費用」は「養育費」より高くなります。

夫に離婚になかなか応じてもらえない場合などは、離婚して欲しいと言うだけでなく、離婚するまでの間の婚姻費用を請求することで、離婚が成立するまで経済的な負担も生じることをしっかりと伝えることも大切です。

相場の確認方法

では、一体どのくらい貰えるのでしょうか? 法律上は、あまり決まっていません。ただ、今までの裁判所の考え方や統計資料を基にした「相場」はあり、WEBサイトで「養育費算定表」や「簡易算定表」で検索して調べることができます。

この一覧表までたどり着ければ、後は比較的簡単です。「夫婦のみ」「子ども1人(0~14歳)」など、自身の家族構成にあわせた表を探してください。
そして、前回の記事でご紹介した事前準備の収入資料(給料明細・源泉徴収票・課税証明書・確定申告)を利用して年収をチェックします。
下の数字が妻の年収、左の数字が夫の年収として、クロスした部分の「○~△万円」という幅が毎月の婚姻費用の相場になります。

収入を確認できる書類を準備して電話もしくは法律事務所に行き質問すれば、弁護士であれば2~3分で教えてもらえます。分からない場合はお気軽にご利用くださいね。

裁判所 養育費・婚姻費用算定表
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf

留意点

ただし、この「養育費算定表」は決して万能ではありません。
例えば、子どもが4人以上の子だくさんのご家庭には対応していません。また、別居していることを前提に作成されているので、まだ同居している場合はこの相場通りにはなりません。住宅ローンの負担がどうなっているかや子どもが私立の学校に通っていて普通よりも学費が高い、といった事情も考慮されていません。疑問が生じたら弁護士に直接ご相談された方がよいと思います。

そして、非常に大切なことを二つお知らせします。

一つ目は、この相場はあくまで「相場」なので、この金額が法律で決められているわけではないということです。
相場より高い金額を貰っていても全く問題はありませんし、低い金額しか貰っていない(場合によっては1円も貰っていない)からといって相手が法律違反になるわけでもありません。
夫婦で決めた取り決めが優先するので、もし相場以上で取り決めができそうであれば、心の中で「たくさん払ってくれてありがとう」と思って貰っていただければと思います。

二つ目は、この婚姻費用を遡って請求できないということです。
今回の記事を読んで「私、こんなに貰っていない!過去分を請求したい!!」という方もいらっしゃるかもしれませんが、それは原則できないのです。
この相場は保障されているわけではないので、もし「少ない!」と思ったら、早目に婚姻費用の調停を申し立てて請求するようにしてください。離婚調停とセットでも、婚姻費用の調停だけでも出すことができます。細かい手続き方法は、弁護士や家庭裁判所の受付の方に質問すれば教えてもらえます。

請求するタイミング

最後に、請求するタイミングについてです。
婚姻費用は、収入をベースに決まります。実家に戻っていて家賃がかかっていない人も、賃貸マンションや住宅ローンで住居費がかかっていても、このような支出には金額はあまり左右されません。
また、収入で決まるということは、パートで働いていた専業主婦の方が正社員になった後で請求してしまうと、金額が少なくなるという結果になってしまいます。

そして、この婚姻費用は、一度決めた後に事情が変わった(例えば年収が上がった)としても、自動的に金額が増えたり減ったりすることはありません。
婚姻費用の金額を増やして欲しい、減らして欲しいという希望がある側が、改めて増額や減額を求めて調停をしない限りは変わりません。

以上を考慮すると、まだこちらの収入が低く相手の収入が高い時に請求するのがベストタイミングということになります。
もちろん、相場よりもたくさん貰っている場合は、わざわざ正面から請求して相場通りに下げる必要はありませんし、1円も貰えていないという方は一日でも早く請求した方がいいと思いますので、それぞれの時機を見て請求するようにしてくださいね。

今回は、離婚の前の法律のルール「婚姻費用」について、詳しくご説明しました。離婚の前に関係してくる重要な法律制度ですから、特に生活費に不安がある場合、心に留めておいていただけたら嬉しいです。

時々「別れたら養育費は払うけど、お前には1円も渡さない」などと不思議なことを言う人がいますが、法律を全く知らないか、ただのわがままな方ですから、淡々と請求することをお勧めします。

次回は、やっとメインの「離婚のときの法律の話」になります。親権が決まるポイントや、財産の分け方のルールなど幅広い内容となりますので、今後ともどうかよろしくお願いいたします。最後まで読んでいただいた読者の方、本当にありがとうございました。

弁護士が教える離婚に関する法律のこと4 離婚するときの法律のルール|親権・養育費・面会



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― 弁護士が教える離婚に関する法律のこと ―
1回目: 離婚を焦らないために知っておくこと
2回目: 離婚を悩んだときに準備すること
3回目: 離婚する前の法律のルール|婚姻費用
4回目: 離婚するときの法律のルール|親権・養育費・面会
5回目: 離婚するときの法律のルール|財産分与・慰謝料・年金分割