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弁護士が教える離婚に関する法律のこと5 離婚するときの法律のルール|財産分与・慰謝料・年金分割

ライター 押見和彦

2009年弁護士登録。宮城県仙台市で4年3ヵ月間「ひかり法律事務所」で経験を積んだ後、目黒総合法律事務所に移転。現在は主に家庭のトラブルの予防と安全・円満な解決のため離婚案件を多く取り扱い、その他セミナー等の活動をしている。

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皆様、こんにちは。弁護士の押見和彦です。
いよいよこのシリーズも最終回となりました。この記事を通じて皆さんに法律のルールが伝わって、実際に役立てていただけていたら嬉しいです。

今回のテーマは、離婚のときに関係してくる法律のルールのうちお金に関することです。財産分与・慰謝料・年金分割という3つのルールを順番にお伝えいたします。

別れた後の生活にも、関係を清算する上での気持ちの面にも関わる大切な制度です。損をしないためにも読んでいただけたらと思います。

財産分与:別れるときのお金の清算

皆さんのご家庭では、家計はどのように管理していますか?

  • 夫名義の通帳に全部一本化している
  • 夫婦で財布は別々にしている
  • 子ども名義の貯金に貯めるようにしているので生活費の口座には残高はほとんどない

など色々なパターンがあると思いますが、誰の名義になっていても家庭全体で見ると合計残高は一緒になります。このため法律では、夫婦で協力して築き上げた財産は別れるときにきちんと清算しましょう、というルールがあります。財産分与という制度です。

この財産分与のルールはとてもシンプルです。

最初に、名義に関係なく家族でどのくらい「プラスの財産」があるのかを確認します。
預貯金は分かりやすいと思いますが、学資保険をかけている、購入した家やマンション、所有している株なども財産として計算します。
忘れがちですが、退職金も含まれます。離婚時に退職した場合に支給される金額を確認し、「結婚生活の期間/勤続期間」で算出します。

次に、家族でどのくらい借金があるのか計算します。この場合も名義を問わず、住宅ローンがいくら残っているのか、クレジットローンや自動車ローンなど全て含めて計算し「マイナスの財産」を出します。

そして、「プラスの財産」と「マイナスの財産」を比べます。
「プラスの財産」が残る場合は、その財産を原則として夫婦で半分ずつにします。
「マイナスの財産」が大きいようであれば、分ける財産はないのでお金は動きません。

以上が財産分与の原則です。名義に関係なく基本的には二分の一になりますが、いくつか例外があります。

  • 相続したもの
    親から相続した家など
  • 結婚前から持っていた財産
    結婚前から持っていた貯金で結婚後も一切手を付けていない預金口座など

独身時代の財産は、夫婦で協力して築いたものではないので分ける対象にはなりません。ただし、結婚後に家計に混ざってしまっていると、独身時代の財産か結婚後のものなのか区別ができなくなってしまうため「夫婦の財産」となってしまいます。

なお、財産分与の重要ポイントになりますが、、基本的には「別居をしたとき」の残高を基準に計算します。「離婚をするとき」ではないので注意が必要です

自分の場合はどうなるのか? 大体の金額でも一度計算してみるか、弁護士さんへの法律相談で確認しておくのがよいと思います。

慰謝料:慰謝料は300万円??

次に、浮気やDVといった事情があったときに問題となる「慰謝料」について、お話しいたします。
WEBサイトで「慰謝料」と検索すると、検索結果に「慰謝料 300万円」というワードが並びます。この影響でしょうか? 多くの方が「慰謝料の相場は300万円くらいなのね」と思ってしまっているようです。「慰謝料=300万円」は大きな誤解です。慰謝料で300万円という金額が認められるのは、本当に稀なケースです。

慰謝料には相場というものがありません。「苦しい思いをして、傷ついた気持ち」に対して「いくらに換算したらよいのか」ということは法律には何も書いてありませんし、実際よく分からないのです。

ただし、ポイントとなる部分はいくつかあります。
浮気であれば、

  • どのくらいの期間浮気をしていたのか
  • 夫婦としての婚姻期間は長いのか、短いのか
  • 何回関係を持ったのか

といったことから、ダメージの大きさを考えます。
DVであれば、

  • 殴られたのか、直接手は出されていないのか
  • ケガや病気の重さ
  • DVの期間

というような事情が金額に影響するでしょう。

しかし、「慰謝料はどのくらいの金額になるのか」は、裁判をしてみないと分からないことがほとんどです。また、「こちらが浮気をしてしまったけれど、元々の原因は相手のDVで逃げ道がそこにしかなかった」というように、お互いに慰謝料が生じるケースもあります。このような場合は一層複雑になります。

また、証拠によっても金額は大きく左右します。

自分にとって都合が悪いと取り繕ったり言い訳する傾向が人にはあるため、言い逃れができないような証拠があるのかどうか、がとても重要になります。
証拠を集める場合は、まだ疑われていることに気付かれていないうちに、淡々と調べてください。「浮気してるの?」なんて聞いてしまうと携帯もロックされて証拠も消されてしまいます。キツイと思いますが、調査する時は我慢して頑張ってくださいね。

そして、ケガをしたときや精神的に不調になったら、我慢せずに早めに専門のお医者さんに診てもらって、診断書の準備をしてください。

ただ残念なことですが……、慰謝料は低額になるケースが非常に多いです。
「こんなに辛い思いをしていたのに、この程度の金額なの!?」とショックを受ける方も大勢いらっしゃいます。

別れた後の新生活のお金として慰謝料をあてにするのはやめましょう。不確実なお金はあてにせず、将来の計画をしっかりと立てて慰謝料はあくまで気持ちの問題として考える、ということが大切になります。

年金分割:シニアになったときの準備

最後に、「年金分割」という制度をお伝えします。
複雑な計算を省略すると、年金は「若い頃に年金保険料を多く納付していればシニアになってから受給できる年金も多く、若い頃にあまり納めていなければシニアになってからの受給額も少ない」という仕組みになっています。

夫がサラリーマン、妻が専業主婦やパート(扶養に入っている)の場合、夫は厚生年金の保険料が給料から差し引かれていますが、妻は保険料を納めていない第3号被保険者となっています。
このまま別れると、「夫は年金保険料を多く納付しているのでシニアになった時に多く受給できるが、妻は納めた保険料が少ないのでシニアになった時に少ししか受給できない」ということになります。

扶養に入っていた期間に夫の給料から差し引かれていた厚生年金の保険料の半分は妻が納めたことにしてください、と離婚をする際に要求できます。これが年金分割の制度です。
この制度には特に難しいことはないので、「夫がサラリーマンで自分が扶養に入っていたことがある」という方は、離婚するときに手続きをするのがよいでしょう。

時効に要注意

財産分与・慰謝料・年金分割の制度には、「時効」という期間制限があります。財産分与と年金分割については離婚してから2年間、慰謝料については悪いこと(浮気やDV)が判明してから原則3年間です。この期間を過ぎると請求できなくなってしまいますので、ご注意くださいね。

さて、今回の財産分与・慰謝料・年金分割というお金に関わるルールで離婚に関する法律のことのお話は最後となります。法律というややこしいお話を最後まで読んでいただいた読者の皆様、改めまして本当にありがとうございました。



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― 弁護士が教える離婚に関する法律のこと ―
1回目: 離婚を焦らないために知っておくこと
2回目: 離婚を悩んだときに準備すること
3回目: 離婚する前の法律のルール|婚姻費用
4回目: 離婚するときの法律のルール|親権・養育費・面会
5回目: 離婚するときの法律のルール|財産分与・慰謝料・年金分割