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母子家庭の生活保護のしくみと落とし穴 その実態は?

ライター 辻寿子

フリーライター歴22年、シンママ歴6年。一卵性双生児の息子は、長男が脳性マヒで車椅子。日本化粧品検定1級、サプリメントアドバイザー取得。結婚歴3回、死別→離婚→離婚の経験あり。

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皆さんは「生活保護」についてどう考えていますか? 国の制度としても世論にさんざん叩かれ、世間の風当たりも強そう……。
母子家庭でも実際に認定されるのが難しいと言われていますが、今回は生活保護の実態に迫りたいと思います。

母子家庭の生活保護受給の割合は?

厚生労働省の資料によると、全生活保護受給世帯のうち、母子家庭は7.1%とかなり低い数字となっています。母子家庭であっても、生活保護が受けられるかどうかは厳しい条件をクリアし、審査を受けなければなりません。母子家庭だからすぐに受けられるという安易なものではないようです。



出典元WEBサイト
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/051604.pdf

母子家庭の生活保護 いくらもらえるの?

まず最初に、母子家庭において生活保護はいくら受給されるのでしょうか? 厚生労働省が定めている算出方法を参考に、筆者の場合を計算してみます。住んでいる場所が等級に分けられており、子どもの年齢や人数によって変わってきます。

  • 住んでいる所 F県F市(1級地-2)
  • 母40代、子9歳、子9歳

これらのデータから導き出すと、
生活扶助基準額156,850円+母子加算24,590円+児童養育加算20,000円+住宅扶助基準額43,000円=244,440円

となります。
ここから収入を差し引いた額が、生活保護の支給額となります。
算出方法は下記を参考にしてください。

生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(平成28年度)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/kijun2804.pdf

もし全く働くことができずに労働収入がゼロでも、児童扶養手当と児童手当は収入と見なされるので、生活保護費から引かれます。
つまり、児童扶養手当が全部支給だとして筆者の家族構成だと、

48,330円+2人目10,000円+児童手当(10,000×2人)=78,330円
となり、これを引くと、生活保護の支給額は166,110円となります。

生活保護を受給すれば、働けなくても月々24万円程度の収入があるのは、本当に困った時に助かりますね!
ただし、生活保護への風当たりの強さから、一時母子加算がなくなったりした過去もありますし、この先も削減の方向にあります。生活保護には色々な制約があるため、将来のことを考えれば、できる限り自立への方法を考えた方がいいでしょう。

生活保護のメリット

母子家庭で生活保護を受ける時、通常の場合より「母子加算」というものがつくため、2万円程度上乗せされます。生活保護を受けるメリットは何でしょうか。

8つの扶助

生活保護には、生活を支えるための8つの扶助があります。今の状況と比べてよく検討してみてください。

  1. 生活扶助
    日常生活に必要な基本的な費用のことです。1種と2種に分かれており、1種は食費など、2種は水道光熱費などのことです。また、生活保護世帯に入院している人がいる場合は、一時扶助という入院中にかかるパジャマやタオルなどの費用も支給されます。
  2. 医療扶助
    基本的には医療費が無料になります。病院にかかる場合、市町村の福祉事務所で「医療券」を発行してもらうことによって受診できます。その際、病院も指定される病院になります。
  3. 住宅扶助
    家賃や引越しにかかる費用、契約更新、家の修繕費など、必要な場合に支給されます。家賃以外の費用は、事前に相談しないと支給されない場合があります。
  4. 教育扶助
    義務教育中の子どもがいる場合に支給され、給食費、学用品や修学旅行の費用などが該当します。
  5. 介護扶助
    生活保護世帯に「要介護認定」の人がいる場合に支給されます。ただし、母子加算と同時に受け取れない場合があります。
  6. 出産介助
    生活保護を受けている人が出産する場合にかかる費用で、決められた範囲内で支給されます。母子家庭の場合の出産では、結婚していなくても同居人またはそれと同等のパートナーがいる場合は、その人の収入も生活保護費から差し引かれたり、生活保護の受給対象から外れたりする場合もあります。
  7. 生業扶助
    就労に必要な技能・資格を修得するのにかかる費用を支給されます。義務教育終了後の高校や専門学校への子どもの進学は、教育扶助でなくこちらに当たります。
  8. 葬祭扶助
    生活保護世帯の中で亡くなった人が出たら、規定の範囲内で火葬や納骨にかかる費用が支給されます。

生活保護のデメリット

生活保護の8つの扶助は手厚いですね。しかしながら、それを受けるには厳しい制限があることも確かです。メリットとデメリットをよく知った上で、生活保護を受けたいかどうかを考えてみましょう。

貯金はNG

生活保護とは必要最低限の生活を保護するものなので、貯金は余分なものと見なされます。働いた分からも、生活保護費からも貯金は禁止です。すると、子どもが進学する時など、資金不足のために諦めざるを得ない状況になることもあります。

娯楽や贅沢品は禁止

税金から支払われる生活保護費ですから、娯楽や贅沢品に使うことは禁止されています。お金の貸し借りも禁止で、借金の返済やもちろん賭け事も禁じられています。

車の所有ができない

自動車は維持費や修理、保険など費用がかかるため、所有制限があります。車がないと生活ができないなど、認められる場合もありますので相談してみましょう。

子どもが18歳になると減る

生活保護世帯にいた子どもが18歳になると、自立したとみなされて保護費が打ち切られます。預貯金もないため大学への進学は厳しく、たとえ奨学金を使ったとしても、これも生活保護から差し引かれてしまいます。
子どもは自立したくても、アルバイトしか仕事がなく、保証人がいないために家も借りられないという状況に陥ってしまうのです。
家計が一緒なら、子どもがアルバイトした収入も生活保護費から差し引かれてしまうため、収入が増えることがないという悪循環になります。脱却するには、生活保護受給をやめ、働いて収入を得るしかなくなります。

親族や前夫に連絡がいく

生活保護の申請時、本当に養える人がいないのかを徹底的に調べられます。国としては生活保護費をできる限り抑えたいので、親や兄弟姉妹、前夫にいたるまで、扶養できないかという連絡がいきます。
親族や前夫に絶対に知られたくない! という場合は、生活保護を受けるのは難しいかもしれません。

周囲の目が気になる

月に一度程度、ケースワーカーや民生委員の訪問があります。また、病院では費用がかからない代わりに「医療券」を使用するので、病院の人にはもちろん、それを見ていた人がいたら生活保護を受けているということがわかってしまいます。
ケースワーカーや民生委員には守秘義務がありますが、近所や周囲の人に絶対バレないようにすることも難しいでしょう。

恋人がいたら不正受給に?

生活保護を受給しているシングルマザーが恋人を作ってはいけないと、禁止しているわけではありません。しかし、児童扶養手当でさえ恋人ができると不正受給と言われかねないため、生活保護ならなおさら風当たりが強くなります。
つまり、生活保護を受けている家に恋人が頻繁に来るということは、電気代や水道代食事代を生活保護費から支払っていることになり、これを不正受給とみなされるのです。
同棲していて相手に収入があるのなら、児童扶養手当と同様、役所に正直に言って相談しましょう。不正受給の汚名と返金は本当に痛いです。

母子家庭で生活保護を受ける条件

母子家庭だからといって、無条件に生活保護が受けられるわけでも、条件が軽くなるわけでもありません。厳しい条件をクリアし、さらにその後の生活上の禁止事項も守らなければなりません。
条件は主に4つあります。

生活費に充てる資産がないこと

不動産や預貯金、生命保険、車など、売却して生活費に充てるものがまったくないことが条件です。

収入を得る能力がないこと

母親が病気や障がいで働けない、子どもの世話や要介護の子どもがいて十分に働けないなど、収入を得られない、またはその能力がないことが必須です。少しでも働くことができれば働き、その分の収入は生活保護費から差し引かれます。
また、子どもがアルバイトのできる年齢なら、子どもも働くことを促される場合があります。

援助をしてくれる人がいない

両親や兄弟姉妹、親族、成人した子ども、前夫など、援助してくれる人がまったくいないことが条件です。前夫から養育費が支払われていれば、その分も生活保護費から差し引かれます。

他の制度を活用しても足りない

児童扶養手当、各種年金、雇用保険などを受給してもなお、生活費が足りないことが条件です。受給している場合は、その分が生活保護費から差し引かれます。

生活保護の申請方法

ここまで生活保護のメリットとデメリットを見てきました。これらをよく見比べた上で、それでも生活保護を受給しなければならないほど困っている場合は、生活保護受給の申請をしましょう。一度申請が通れば永続的に生活保護を受けられますが、病気や障がいによって働けない、働けても収入が足りないという場合を除いては、自立までの一時的なサポートと思って受給した方がベターです。
特に、子どもの進学、就職にまつわる将来を思うと、生活保護を受けるデメリットが大きすぎるからです。

福祉事務所か福祉担当課へ相談

生活保護を受けるには、まず相談に行くことから始まります。受給のための条件はかなり厳しいので、あらかじめ収入のわかる預金通帳や給与明細、光熱費の領収書、家賃の振込み明細などを用意していくといいでしょう。
前述したとおり、条件を満たさないと受給されることはないので、生活が困窮していることを明確に説明できるようにしてください。

申請書類の提出

窓口で申請を受け付けてもらえなかったという話はよく聞きます。それほど生活保護受給は厳しいということです。当日は「今日絶対に申請書類を受け付けてもらう」という意気込みで臨んだ方がいいようです。

【申請に必要なもの】

  • 住居の契約書と家賃を振り込んでいる通帳
  • 手持ちのすべての通帳(当日の残高を記帳する)
  • 健康保険証
  • 過去3ヶ月間の給与明細
  • 生命保険証書、簡易保険証書など
  • 児童手当、児童扶養手当などの受給証
  • 直近の公共料金の領収書
  • 認印
  • 生活保護申請書

家庭訪問

生活保護の申請後、ケースワーカーが家に来て聞き取り調査をします。相談に行った時と同じことのくり返しになりますが、誠実に対応して本当に困っていることを訴えましょう。家の中を見られるので緊張すると思いますが、事実をきちんと見てもらいましょう。

審査に2週間から1ヶ月

書類申請、家庭訪問後に審査が行われ、生活保護が受理されたかどうかの通知がきます。申請から2週間から1ヶ月ほどかかります。また、不受理だった場合も諦めずに、申し立てをしてください。一度きりで諦める必要はありません。

生活保護費の支払い方法

生活保護が受理されたら、再度福祉事務所か福祉担当窓口に行き、支給を直接受け取りにするか、口座振り込みにするかを決めます。

生活保護の問題点

前述してきたように、生活保護を受給していても、収入があれば最低生活水準の保護費から差し引かれます。例えば、児童手当と児童扶養手当を差し引いた20万円が支給されていたとします。少し働けるようになったので、就労して月収6万円を得ることになりました。すると、20万-6万=14万となり、生活保護が14万の支給となるのです。
収入があるのだから、足りない分だけ補うという考え方で間違ってはいませんが、生活保護で支給されるのは最低限の生活を送れるだけの費用です。少しでも働くことによって、お金に余裕ができるといいのですが、働いても結局は全体の収入額が変わらず、生活水準は上がりようがありません。しかも生活保護を受けるための禁止事項は守らないといけないのです。

ここが生活保護最大の問題点だと筆者は思います。働く意欲をそがれ、働いても意味がないと思わせてしまうのです。

本当に困った時、生きていくことさえままならないほどお金がない時には、頼りになる制度ですが、頼りきりになると、将来子どもの進路が限られて悲しい思いをさせてしまいます。また、母子家庭で生活保護を受けると、約4割がその子どもも生活保護となってしまうという貧困の連鎖も社会問題となっています。

生活保護は自立するまでのこととして、生活保護を受けながら自立する方法を探しましょう。
義務教育中の子どもが二人いる場合なら、最低生活水準にかかる費用は24万円前後です。児童扶養手当と児童手当で支給される7~8万円を差し引くと16万円となるので、16万円稼げれば生活保護の制約を受けることもなく、自立することができます。

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