シングルマザー(母子家庭)の暮らしを「ちょっとずつ」良くする

シングルマザー目線で考える保険2 医療保険|加入を検討するときのポイントは?

ライター 加藤葉子

女性とシングルマザーのお金の専門家として、全国の女性よりお金の相談を受けているファイナンシャルプランナー。行政主催のマネー講座や女性ファイナンシャルプランナーの養成などでも活動中。シングルマザーで一児の母。

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シングルマザーにとって、万が一の備えを考えるのは大切なこと。今回は、病気やケガをしてしまった時や働けなくなってしまった時の保険についてご紹介しましょう。

医療保険の加入状況

平成28年度「生活保障に関する調査」(公益財団法人生命保険文化センター)によると、病気やケガによる治療や入院に備えて貯蓄などの準備をしている人が8割を超えています。

公的医療費の支援だけでは、「医療費を負担するのは心もとない」と考えられているのがわかります。

なお、準備している内容は、生命保険が7割、預貯金が4割となっています。


病気やケガによる治療や入院に備えた準備


病気やケガに備えた準備の内容(複数回答可 単位:%)

また、疾病入院給付金(病気で入院した場合に給付されるお金)が支払われる生命保険加入者が7割を超えており、医療保険への加入率は高くなっています。


疾病入院給付金の有無の割合


ただ、シングルマザーの場合、医療費の助成を受けられます。

医療保険は必要なのでしょうか?

まずは、どのような公的支援やどの程度の備えが必要なのかを知り、子どもが成長した後の生活も含めて検討しましょう。

自治体の医療費助成

多くの自治体がひとり親家庭へ医療費を助成しており、子どもが18歳の年度末まで助成を受給できるほか、親も助成の対象となります。


医療費の公的制度一覧

ただし、ひとり親家庭の助成を受けるには所得制限があり、その基準は総じて児童扶養手当と同程度となっています。

収入を増やす努力をされた結果、収入要件をわずかに超えたために児童扶養手当と医療費助成が同時に受給できなくなる、ということにならないよう前もって調べておきましょう。


東京都杉並区と大阪市の例

東京都杉並区 大阪市
対象者 ひとり親家庭等の
・18歳に達する日以後の最初の3月31日(中度以上の障害を有する場合は20歳未満)までの児童
・養育する者(父、母または監護者)
ひとり親家庭等の
・18歳に達する日以後の最初の3月31日までの児童
・養育する者(父、母または監護者)
助成内容 保険診療に係る医療費の自己負担分について一部負担金を除いた額を助成
[住民税を課税されている場合]
医療費の1割負担。月の上限は、外来12,000円・入院は44,000円
[住民税非課税の場合]
負担なし
通院・入院の保険診療内の自己負担分を1医療機関ごと1日最大500円(月2日まで)、3日目以降は負担なし。
複数の医療機関にかかるなど、自己負担が月2,500円を超えた分は超過分払い戻し
所得制限 扶養人数が0人:1,920,000円
扶養人数が1人:2,300,000円
扶養人数が2人:2,680,000円
扶養人数が3人以上:1人増すごとに380,000円を加算
※父または母及び養育者の場合
※扶養人数に、老人扶養親族または特定扶養親族がいる場合など、所得限度額があがる場合がある。

※要件は自治体によって異なります。詳細はお住まいの自治体でご確認ください。



ひとり親家庭の医療費助成を受けられる間は、自治体によって多少の差があっても自己負担額は少なく、医療費が不足する心配はあまりしなくてよいでしょう。

その代わり、「病気やケガで働けない期間の生活費を貯金で確保できるか」ということを考えておきましょう。

ただし、ひとり親家庭への手当や医療費助成は、子どもが18歳になった年度末(高校卒業時)で親も子も対象外になります。

子どもが大学進学を希望するなら、どの段階でどのくらいのお金が必要となるかも調べておくことをおすすめします。
高校卒業後に就職した場合も安定した収入を得られるまで親の援助に頼るケースも考えられます。

医療費に限らず、想定される支出の準備は事前にしておいた方がよいでしょう。

病気やケガに対する公的支援

次に、病気やケガの場合の公的な支援制度をみていきましょう。

健康保険と高額療養費制度

国民健康保険や会社の社会保険に加入していれば、病院での支払いは総額の3割を負担します。3割といっても、大きな病気やケガであれば医療費が高額となることがあります。

被保険者の負担を軽減するため、保険診療の自己負担額を一定の金額(自己負担限度額)に抑える高額療養費制度という支援制度もあります。


高額療養費制度の自己負担額(70歳未満の方)

所得区分(年収) 自己負担限度額 多数該当
約1,160万円~ 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% 140,100円
約770~1,160万円 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 93,000円
約370~770万円 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円
~約370万円 57,600円 44,400円
住民税非課税 35,400円 24,600円



年収が240万円の方を例に確認しましょう。

所得区分は、表の「年収〜約370万円(年収約370万円まで)」に該当します。
例えば、1ヵ月に100万円の医療費がかかった場合、健康保険の適用のみであれば自己負担額は全体の3割になるため、30万円支払わなければなりません。

しかし、高額療養費制度が適用されると、自己負担額は57,600円のみで、それを超える金額は後日払い戻しされます。

なお、健康保険組合(国民健康保険に加入している方は自治体)から限度額適用証が事前に発行されていれば、窓口の支払いは57,600円となります。

※「多数該当」は、既に高額の負担が年3ヵ月以上ある場合の4ヵ月目以降から適用されます
※入院時の食事代は対象外となる費用もあるため、多めに考えておくことが必要です

傷病手当金の支払い

傷病手当金は、会社の健康保険の加入者が病気やケガで休職した日が連続して4日以上あった場合、4日目以降の休んだ日に対して支給される手当金です。

支給金額は、給料を日割り計算し算出した額のおおよそ3分の2程度と考えておいてください。

ただし、会社から傷病手当金を上回る額の給料が支給された場合は支給されません。

また、国民健康保険には傷病手当金はありません。会社の健康保険の加入要件を満たさないパートの方や自営業の方は気をつけてください。

労災保険

業務中や通勤中に発生したケガや病気の治療は、健康保険ではなく労災保険の対象になります。

  • 自己負担なく治療を受けられる
  • 会社を休む場合には4日目から給料日額の60%の給付
  • 障害や介護が必要な場合の給付

と手厚い内容となっています。

雇用保険の失業給付金

病気やケガで働けなくなり仕事を辞めなくてはならない、療養後に再就職先が見つからない場合など、条件によっては雇用保険から失業給付を受けることもできます。

給付額は、退職前6ヵ月間の給料日額の約50~80%です。
支給を受けられる日数は、離職日の年齢や、雇用保険の被保険者だった期間、離職理由などにより決定され、90日~360日の間で決められます。

高額療養費制度があるため、健康保険適用内であれば莫大な医療費を一度に支払う必要はありません。

会社の社会保険に加入していれば傷病手当金を受け取れる場合もあり、仕事が原因の病気やケガであれば労災保険がおります。

しかし、働けなくなってしまったら仕事に復帰できるまで収入が減る可能性が高いので、生活費が足りなくなるおそれがあります。

収入の減少や貯金額に不安がある方は医療保険を検討してみてはいかがでしょうか?

医療保険の加入例

これまでの内容も踏まえ、「3歳と1歳の二人の子どもを育てる現在30歳のシングルマザー」の保険料を、「現時点では見送り50歳で同じ医療保険に加入したいと考えた」ケースと比較しながらみていきましょう。


保険料比較

30歳 30歳 50歳
払込期間 終身 60歳で満了 終身
月額保険料 3,192円 4,741円 5,032円
保険期間 終身
保険内容 ・病気・ケガによる入院 1入院120日 日額10,000円
・手術 入院中は20万円・外来5万円
・先進医療特約 先進医療にかかる技術料と同額(通算2,000万円限度)

ひとり親家庭への補助を受け終わってからシングルマザーが医療保険に入ろうとすると、保険料は若いころに比べると高額になります。健康面で既に不安を抱えていると、加入できない場合もあります。

計画的に貯蓄している場合でも、予期しない入院やケガが起こると貯蓄を取り崩すことになり生活が行き詰まることも考えられます。

現在は医療保険の必要を感じていなくても、月々の保険料が安い若いうちに老後までの一生涯の終身保障の保険に加入し、保険料の払込が60歳または65歳で満了になれば、老後の保険料の負担は軽減するでしょう。

既に医療保険に加入されている方は、10年ごと、15年ごとに更新が必要な更新型ではないか、チェックしてください。
保険料が割安だと感じていても、更新時に増額するケースもあります。終身保障に切り替えるのであれば早めに行動しましょう。

その他の保険

がん保険と就業不能保険もご紹介します。この二つも保険もシングルマザーの抱えるリスクにも対応ししています。

がん保険

女性の死因は、30〜80代で悪性新生物。つまり、がんが第1位となっています。すでに、がん保険の加入を検討されている方もいらっしゃることでしょう。

近年、がん患者の入院期間は短くなっており、通院患者の方が増えています。医療保険は様々な病気に幅広く対応できますが、がんの通院治療中にかかる費用は医療保険の基本的な入院保障ではカバーできません。

がん保険の場合は、がんの治療中で働くことができない場合も、がん治療の給付金を受給できるものが多数です。また、医療保険にも先進医療特約やがん特約を追加できる商品があります。がんが気になる方は早めに検討されるとよいでしょう。


年齢別・女性の死因

(人口動態統計 平成27年)


悪性新生物(がん)患者の入院日数

(厚生労働省 患者調査の概況 平成26年)


悪性新生物(がん)患者の外来人数

(厚生労働省 患者調査の概況 平成26年)


がん保険の加入例(30歳女性)

保険期間 終身
保険料 3,139円
主な保障内容 放射線治療を受けた月 月額 20万円
抗がん剤・ホルモン剤が投与、処方される入院または通院をした月 月額 20万円
ガンの治療を直接の目的として所定の先進医療による療養を受けたとき 先進医療にかかる技術料と同額(通算2,000万円限度)
先進医療による療養を受けたとき 1回につき15万円
初めてガンと診断確定されたとき 一括で 100万円

就業不能保険

就業不能保険は、病気やケガで働けない状態が続いた場合に受け取れる保険です。

医療保険が一般的に入院に対する保障が1入院あたり60~120日と限られているのに対し、就業不能保険は入院をしていない自宅療養も含め長期療養にも対応しています。

ただし、勤労所得が安定していることが条件になるため、年収によっては加入できない場合があります。また、働けない状態になってから一定の期間を経過しないと給付が開始されないので、この点については注意が必要です。

病気やケガのリスクに備えるために

病気やケガのリスクを少しでも回避できるように、特に下記4点を留意しておきましょう。

  • 日頃から健康管理に気を付け、病気やケガのリスクを少なくする
  • 療養のために休職ができる勤務条件で働ける仕事に就く
  • 自治体の医療費助成の条件を調べておく(特に所得要件に注意)
  • 子どもの将来も含めライフプランを考え適切な保険を選ぶ

シングルマザーの万が一の事態で、子どもにとって精神的にも経済的にもダメージが大きいのは、病気やケガよりも亡くなってしまう場合になるため、医療保険の優先順位は低くなります。
きちんと貯金していれば医療保険は必要ない、と考えられる方もいらっしゃいます。

とはいえ、病気やケガの程度・治療期間・生活費を含めた治療中に必要な金額・治療後に職場復帰できるかどうかなど見通しを立てることは非常に難しく、十分な貯金ができるまでには時間もかかります。

その間も備えになるのが保険の利点です。医療保険(がん保険を含む)は、早いうちに加入が必要か検討しておくと安心でしょう。