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養育費の未払い・滞納、どう対処する?実態から方法までを解説

ライター 辻寿子

フリーライター歴22年、シンママ歴6年。一卵性双生児の息子は、長男が脳性マヒで車椅子。日本化粧品検定1級、サプリメントアドバイザー取得。結婚歴3回、死別→離婚→離婚の経験あり。

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No58s

シングルマザーにとって、養育費は子どもと共に安定した生活を送る上で欠かせない収入源です。

今回は、養育費滞納の実態と子どもの成人まできちんと継続して養育費を受け取る方法を詳しくお伝えしたいと思います(弁護士監修済)。

養育費滞納の実態

「離婚する時に養育費の取り決めをしたのに、実際には数ヵ月しか支払われなかった」という話をよく聞きます。

厚生労働省の資料から実態を把握しておきましょう。

養育費の概要

まず、「養育費」の定義から確認しましょう。

養育費とは?

養育費とは、子どもが社会的・経済的に自立するまでに必要な費用のことで、生活経費、教育費、医療費などが含まれます。

しかしながら、金額や支払期間などは法律で定められているわけではなく当事者同士の話し合いによって決められます。

養育費を受ける権利は子どもにあり、親には自分と同等の生活水準を保障する「生活保持義務」があります。自己破産しているなど親の生活に余裕がなくても、養育費の負担義務がなくなることはありません。

養育費の目的

まだ未成熟な子どもに対し、親は生活を保障し、教育をし、心の成長を支えなければなりません。

養育費を支払うことは親としての義務であり、離婚しても子に対する責任が消えることはありません。

養育費は子どもの成長のために必要なものです。前夫との関係性が良くなくても、子どものためにきちんと受け取れるようにしましょう。

養育費受け取りの実態

養育費の受け取り率は?

厚生労働省の資料によると、養育費を受け取っているのは平成18年で19%、平成23年には19.7%となっており、かなり低いことがわかります。

しかも、「約60%が受け取ったことがない」という驚くべき数値になっています。

出典元:
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-katei/boshi-setai_h23/dl/h23_18.pdf

養育費滞納の理由

前夫が養育費を未払いにしてしまう理由は、大きく三つあるようです。

  • 経済的に困難
    離婚時の財産分与、慰謝料など
  • 環境の変化
    再婚した、給与が減ったなど
  • 養育費に不満
    子どものためでなく前妻のためのお金に思えてしまうなど

元夫側にも色々と理由があると思いますが、いかなる事情があろうと養育費は子どものために支払う責任があります。

前夫に連絡するのが嫌で催促をしなければ、そのまま滞納が続く可能性もあります。振込みが遅れたら連絡するようにしましょう。

養育費滞納に時効はあるの?

養育費には請求権がありますが、時効はあるのでしょうか? また、遡って請求することは可能なのでしょうか?

養育費の時効について

養育費には時効があります。
離婚時に養育費の取り決めをしていた場合、原則として5年間の時効期間が定められています。ただし、あくまでも原則であり、例外ももちろんあります。

時効が中断される場合

養育費の時効が中断されるのは、裁判所で作成された書面(調停調書、判決など)によって支払いの取り決めが行われた場合で、時効は10年間となります。時効期間内に養育費の請求をした場合も6ヵ月間時効をストップできます。

養育費を請求するには、養育費請求の調停又は審判を申し立てが必要になります。裁判所での手続きをしなければ時効は中断されないので注意しましょう。

時効が成立してしまったら?

養育費の時効が成立してしまったら、もう諦めるしかないのでしょうか?

実は時効が成立しても、請求することは可能です。

相手側が時効期間の満了を主張する「時効援用」をしない限り、裁判手続きを通した請求もできます。

離婚時に養育費の取り決めをしていない場合は?

養育費は子どもの権利ですから、親であれば、一緒に暮らしていなくても親権がなくても、養育の義務があります。

離婚時に養育費の取り決めをしていなくても、子どもが成人するまでは養育費の請求をすることができます。

ただし、過去にさかのぼって請求しても、ほとんどの場合認められないため、実質は養育費を請求した月から認められることになります。

公正証書の重要性

養育費についての公正証書を作成したかどうかで、未払いへの対処方法も効力も大きく変わってきます。

面倒だとは思いますが、公正証書を作成しておくことをお勧めします。

公正証書の重要性

公正証書は法務大臣が任命する公証人が作成する公文書のことです。国の機関が作成し原本を公証役場で保管してくれるので、いざという時に強力な効力を発揮します。

特に協議離婚における公正証書は、双方合意の上で親権や養育費のこと、財産分与のことなどを取り決めてから作成しましょう。協議離婚の場合、後から証明するのが難しくなるので公正証書が重要になってきます。

お金も手間もかかりますが、養育費を滞納されても裁判を起こすことなく強制執行ができるという強みがあります。

なお、作成時には「○○(名前)は、本公正証書記載の金銭債務の支払を遅滞したときは、直ちに強制執行に服する旨を陳述した」という内容の一文を記載することを忘れないようにしましょう。

公正証書の作成方法

弁護士や行政書士に依頼する方法もありますが、個人でも作成できます。

公正証書を作成するにあたり重要になるのが、「双方が納得している」ということです。

前夫が養育費の支払いに応じてくれない可能性も考えると離婚届を出す前に作成しておくと安心ですが、離婚時でも離婚後でもいつでも作成することは可能です。

養育費滞納の対処方法

実際に養育費が未払いになっている場合、どう対応すべきなのでしょうか?

公正証書の有無、離婚時にどのような取り決めをしたか、離婚調停を行ったかどうかによって対処法は異なります。

公正証書がある場合

「養育費を子どもの成人まで毎月○○万円支払う」という公正証書を作成していれば、相手が滞納してた場合、裁判をしなくても相手の給料や資産をただちに差し押さえることができます。

養育費の未払いに関しては、前夫の給料の半分までを差し押さえることができ、養育費の支払期間が終わるまで毎月差し押さえることもできます。

公正証書の効力を知っていれば、前夫も簡単に滞納できず抑止力にもなります。

離婚時に取り決めはしたが公正証書はない場合

離婚協議書を作成しているが公正証書でない場合は、裁判での手続きをしなければ相手に強制的に養育費を支払わせることはできません。

では、どのような手段を執れるのでしょうか

支払いの催促をする

まずは、メールや電話、手紙などで「○○日までに支払ってください」という旨の連絡をしましょう。

内容証明郵便

「一般的な連絡方法では無視され支払ってもらえない」という場合には、内容証明郵便で要求します。

内容証明郵便とは、「いつ、誰が、どのような内容の手紙を送ったか」を郵便局が証明してくれる手紙であり、証拠能力も高くなります。

通常の連絡方法では無視しても内容証明で請求されると驚いて慌てて支払う、というケースも多くあるようです。

なお、養育費の時効に関しては、相手が受け取ったことの証明(配達証明郵便)も非常に重要になります。配達証明付き内容証明郵便を利用するとよいでしょう。

養育費請求調停の申し立て

強制執行ができない場合は、家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てましょう。

養育費請求調停とは、調停委員が立ち会って双方の事情や資料を確認しながら解決案を提示したり、提案したりして合意を目指していくものです。

調停が成立すると「養育費を支払う約束が法的にできた」ということになります。不払いにされた場合には、強制執行ができるようになります。

調停調書や裁判の勝訴判決がある場合

裁判による判決書、離婚調停、養育費請求調停などの調停調書がある場合には、強制執行が可能です。

履行勧告

履行勧告は、調停調書や勝訴判決がある時に利用することができます。

調停などで決めたことが約束通りに行われていない場合、家庭裁判所へ申し立てると家庭裁判所から電話や郵便などで相手に勧告してくれるというシステムになっています。

ただし、口約束や公正証書を作成した場合には利用できないので注意してください。

履行命令

履行勧告に応じない場合、家庭裁判所に申し立てることで相手に約束を実行するよう命令してもらうことができます。

正当な理由がないのに履行命令に従わないと10万円以下の過料となりますが、履行命令に法的強制力はないため、養育費を強制的に支払わせることはできません。

強制執行

履行勧告・命令をしても養育費が支払われない時は、前夫の財産や給料を差し押さえる強制執行を行うことができます。

ただし、相手に差し押さえるだけの財産がなければ強制執行を行う費用が無駄になってしまうので、事前の調査が必要でしょう。

前夫が会社員などで給与を受け取っている場合は、給与の差し押さえが可能です。

勤務先に通知されてしまうため、差し押さえる旨を連絡した時点で支払いに応じるケースも多いようです。

また、一度でも不払いがあった場合は、一回の強制執行手続きで将来にわたって養育費を支払わせることができるので、今後の心配をしなくてもよくなります。

よくある質問

子どもが成人するまでの間、養育費がきちんと支払われれば、支払われない場合に比べて数百万の収入の違いになります。諦めずに、支払いを受ける方法を探してみましょう。

Q1:養育費に利息は発生する?

養育費が未払いになった場合、遅延損害金としての利息は法的には発生しません。

Q2:養育費の増額はできる?

できます。ただし、前夫の了承を得ることが条件です。

話し合いで了承してもらえない場合は養育費増額調停を行うことになりますが、相手側から逆に養育費減額調停を起こされることもあります。

Q3:途中から養育費請求はできる?

離婚時に何も取り決めていなくても、離婚後に養育費を請求することはできます。

「養育費の請求はしない」という離婚協議書を作っている時は、請求が難しくなりますが、この場合も養育費は子どもにも求める権利があるため、子どもの親権者が代理となって養育費を請求することは可能です。

Q4:養育費受け取りの期間延長はできる?

前夫が了承すれば延長できます。

前夫が認めない場合は、通常子どもが20歳を過ぎていると特別な理由がない限り延長は難しいでしょう。
理由として認められるのは、大学進学や、障がいによって就労できない場合などです。

Q5:滞納分の一括請求はできる?

時効になっていない未払い分の養育費は請求することができます。

ただし、請求しても相手に支払い能力がなければ一括で支払ってもらうことは困難でしょう。
給与の差し押さえなら一回の手続きで将来の分まで差し押さえができますが、養育費の支払い期限後に支払われる給料からしか取り立てることができず、差し押さえの上限は2分の1と法律で定められているため、やはり一括で回収するのは難しいでしょう。

まとめ

8割ものシングルマザーがきちんと支払いを受けていない! というのが養育費の現実です。
子どもの成長に関わる大切なことなので、泣き寝入りせずに支払ってもらう方法を考えていきましょう。

いかがでしたでしょうか? 参考になったという方は是非シェアをお願いします。