シングルマザー(母子家庭)の暮らしを「ちょっとずつ」良くする

シングルマザーの半数が貧困世帯って本当?その予防策と解決策は?

ライター 野崎陽子

大学生の娘がいるシングルマザーです。フリーのライター・編集者として出版広告分野で20年以上活動し、子育てや遊び場などのテーマで著書も10数冊。フリーランスを目指すママたちのお手伝いをしています。

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厚生労働省がまとめた「各種世帯の所得等の状況」によると、平成24年度の1世帯あたり平均所得金額は537万2,000円ですが、その所得金額に達しているシングルマザー家庭はたったの4%です。

なお、母子家庭の平均所得金額181万円なので子どもがいる他の世帯に比べて約350万円低く、しかもシングルマザーの約半数はパートやアルバイトなどの非正規雇用。それらの世帯は月収10万円前後との調べもあります。

さらに、子どもの父親から養育費を受け取っている家庭は全体の2割程度と聞けば、母子家庭の2世帯に1世帯が貧困だという数字もうなずけますね。

安定した収入と貯えがあったとしても、私たちはいつ生活苦に陥るかわかりません。そうならないための対策、あるいは貧困から抜け出すための方法を一緒に考えていきましょう。

シングルマザーの貧困率

厚生労働省がまとめた「各種世帯の所得等の状況」によると、平成24年の貧困ライン(等価可処分所得の中央値の半分)は年収122万円。これを月収に換算すると約10.4万円になります。

この貧困ラインにいる割合が子どものいる現役世帯で15.1%なのに対し、ひとり親世帯では54.6%(そのうちの約9割が母子世帯)。この数字を裏付けるように、生活意識の調査では母子世帯の84.8%が生活苦を訴えています。

貧困には、大きく分けて「絶対的貧困」と「相対的貧困」の二つがあります。

絶対的貧困とは、生きる上で必要最低限なものすら手に入らない状態。一方の相対的貧困とは、厚生労働省が割り出した貧困ラインを下回る状態を指します。

平成26年度の全国消費実態調査によると、母子家庭(母親と18歳未満の子どもが二人以上いる世帯)の平均月収は18万9,520円。しかし、先にも触れた通り母子家庭の約半数は月収10万円前後と言われています。

この収入に児童扶養手当や養育費などを付加しても、子どもを育てながら生活するには厳しい状況であることわかるでしょう。パッと見では貧しくなくても、その実情は「子どもにお腹いっぱい食べさせてあげられない」「学校の教材すら買ってあげられない」という家庭がたくさんあるのです。

厚生労働省 各種世帯の所得等の状況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/03.pdf

厚生労働省 国民生活基礎調査(貧困率)よくあるご質問
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21a-01.pdf

シングルマザー 就業率は高いのに収入が低いのは何故?

雇用環境における男女間格差の問題

離婚や未婚出産などでシングルマザーは増え続けています。

子どものいる世帯は約1,180万世帯ですが、そのうち母子家庭は約124万世帯。学校の1クラスに数名はシングルマザーの子どもがいるという計算になります。

いまでは母子家庭も「例外的な家族のかたち」ではなくなりましたが、日本の社会には「両親がそろって安定した環境のもとで子どもは育つべき」という考え方が根強く残っています。そういった標準モデルとは異なる家族は、制度上さまざまな不都合が起こってくるのです。

たとえば、日本には雇用環境における男女間格差がはびこっています。

「男は外で働き、女は家を守る」という片働き家族がいまも家族賃金の標準モデルであるため、日本社会(企業)の主流となっている労働者は、あくまでも「一家の大黒柱」である既婚男性。家事や育児や介護を妻に任せることで「仕事に集中できる人材」が求められているからです。

一方、(家事や育児や介護を担うことになる)女性は、周辺労働に就くことが当たり前になっています。総務省統計局の資料によると、働く女性の約6割は非正規雇用であり、40歳代後半以上の中高年層では7割になります。

新卒・正社員で企業に雇用された女性の約6割が、妊娠や出産を機に離職すると言われています。そして「子育てが落ち着いたら再就職したい」と望んでも、いったん離職してブランクが空き年齢を重ねると、よほどの資格やスキルがない限りは低待遇低賃金の非正規雇用に就くしかない……、という現実があるのです。

「働いても貧困」という日本の母子家庭の実態

世界各国の男女平等の度合いを指数化した2016年版「ジェンダー・ギャップ指数」(世界経済フォーラム調べ)では、日本の男女間格差は調査対象144カ国中111位。

子どものいる男女の賃金格差でも、子どもがいる女性労働者の賃金は、子どもがいる男性労働者の賃金の4割にも満たないと言われています。これらのデータからも、日本社会での「子どもを持つ女性の就労」はきわめて不利な状況にあることがわかるでしょう。

さらにシングルマザーは、家事や育児の負担を背負いながら「一家の大黒柱」として生計を立てなければなりません。母子家庭が(両親のそろった)標準モデルの家庭と同水準の稼ぎを得て、同水準の生活レベルを維持することは並大抵ではありません。

就業率は8割を超えていながら貧困率が高い、というのが日本のシングルマザーの特徴です。どんなに働いても収入があがらない。これでは、生きることすら困難になってしまうのも無理はありません。

大家族が当たり前だった昭和より前の時代には、離婚して実家に戻っても家族の支えで生活することができました。地域社会のしくみが機能していたので、地域のみんなで子どもを育てるという意識にも助けられたことだと思います。

ところが、核家族化が進んで地域社会が崩れた現代では、母親ひとりの力で子どもを育てていかなければなりません。親も元夫も経済的体力がなく、親に頼ることもできばければ元夫から養育費が支払われないケースも増えています。

日本特有の「働いても貧困」というシングルマザーは、経済面だけでなく「時間の貧困」にも陥りがちです。働くシングルマザーは仕事や家事に手一杯のため、常に時間がありません。

それは子どもや周囲の人たちとのコミュニケーション不足を招き、母親が精神的に追い詰められてしまう要因にもなるでしょう。

「共同参画」2017年1月号 世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2016」を公表
http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2016/201701/201701_04.html

シングルマザー貧困問題の乗り越え方

ハローワークを上手に活用しよう

生活苦に陥っているシングルマザーは、多くの場合がパートやアルバイトなどの非正規雇用者です。少しでも時給が高い仕事を求めて転職をくり返す人も少なくありません。

仕事を探す場合、つい給与や時給で決めてしまいがちですが「金銭面」よりも「働きやすさ」に注目してみてはいかがでしょうか。

つまり「長く続けられる仕事かどうか」を判断基準にするのです。パートやアルバイトでも、長く続けることで昇給の可能性や正社員への道が開かれるかもしれません。

人手不足の昨今、シングルマザーが働きやすい環境を整えている職場も増えています。「ハローワーク」には、特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用の制度を活用した「シングルマザーを歓迎する企業」の求人も多く集まっています。

仕事に役立つ技能や資格取得をサポートする「自立支援教育訓練給付金」「高等職業訓練促進給付金」などについての相談も可。
人手不足のいまは売り手市場なので求人WEBサイトにもたくさんの情報が載っていますが、ハローワークを上手に利用すると、また違った道が開けることもあると思います。

子育てをしている女性にサービスを提供する「マザーズハローワーク」が全国に21ヵ所「マザーズコーナー(一般のハローワーク内に設置)」も全国に163ヵ所開設されています(平成27年現在)。

なお、全国にある「母子家庭就業・自立センター」でもシングルマザーに向けた就労相談や職業紹介などを行っています。

養育費が支払われないときの相談窓口

養育費は、子どもが健やかに成長するための権利なので、子どもの父親から受け取ってしかるべきものです。ところが、養育費を受け取っているシングルマザー家庭は2割程度とのこと(厚生労働省調べ)。

その背景には「養育費をもらうことは子どもの権利である」という認識が母親の中に不足している事実があると思います。

離婚する際に、子どもの父親と養育費の取り決めをすることは必須です。元夫には、わが子に自分と同水準の生活を保障する義務があり、収入の多い少ないに関係なく養育費を負担しなければなりません。

養育費などの決め事をまとめる際は公正証書を作成しましょう。「元夫と関わりたくない、これ以上もめたくない……」そんな理由から口約束であいまいに済ませてしまうケースも珍しくありませんが、養育費の未払いや滞納が起きたときに口約束だけでは何の効力もなく、請求や回収が難しくなります。

公正証書を作成しておらず、元夫からの養育費が滞っても対応に苦慮している。そのような場合は最寄りの「母子家庭など就業・自立支援センター」に相談してみましょう。

兵庫県明石市や岡山県津山市のように、親子の面会交流や養育費など離婚後の様々な問題に積極的に取り組む自治体もあります。住まいのある自治体の、ひとり親を支援する窓口に問い合わせてみてもいいでしょう。

厚生労働省 離婚母子世帯における父親からの養育費の状況
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-setai06/02-b16.html

兵庫県明石市 離婚後のこども養育支援 ~養育費や面会交流について~
https://www.city.akashi.lg.jp/seisaku/soudan_shitsu/kodomo-kyoiku/youikushien/youikushien.html

津山市が養育費請求費用を助成へ ひとり親家庭を支援
http://www.sanyonews.jp/article/547920/1/?rct=seiji_gyosei

シングルマザーが利用できる各種支援制度

利用できる支援制度も確認しておきましょう。

主な手当及び減免制度

児童扶養手当 両親の離婚によって、父または母のいずれか一方から養育を受けている児童のために自治体が支給する手当
医療費助成 ひとり親家庭の子どもや親が医療機関で診察や治療を受けた際に、その費用の一部または全額を自治体が助成
住宅助成制度 賃貸に住んでいる経済的困難なひとり親家庭の家賃の一部を自治体が助成
就学支援 経済的に就学が困難と認められる児童生徒の保護者に対して国および地方公共団体が諸経費を助成
高等学校等就学支援金制度 国公私立問わず高等学校生徒がいる経済的困難な家庭に対して、教育費の一部を助成
国民健康保険料・国民年金保険料の軽減制度 前年所得が一定額以下の場合に保険料の納付が猶予、または保険料が軽減される制度
上下水道減免制度 児童扶養手当受給世帯および生活保護を受給している世帯などの上下水道料金の減免制度
粗大ごみ減免制度 児童扶養手当受給世帯および生活保護を受給している世帯などの粗大ごみ料金の減免制度
家庭ごみ有料袋の減免制度 児童扶養手当受給世帯および生活保護を受給している世帯などに一定枚数の有料ごみ袋を配布
JR通勤定期券割引制度 児童扶養手当受給世帯および生活保護を受給している世帯などの世帯員がJRの通勤定期乗車券を購入する場合の割引制度
都営交通無料乗車券 都内在住の児童扶養手当受給世帯および生活保護を受給している世帯などに都営交通無料乗車券を発行

※実施状況は自治体によって異なります
※ひとり親世帯に限らず利用できる制度も含まれます

シングルマザー家庭が利用できる給付型奨学金

大学への進学は、シングルマザーとその子どもにとって大きな試練になります。受験勉強もさることながら、問題は「高額な学費をどう工面するか」でしょう。

「奨学金を借りればどうにか行けるかもしれない」そう考える家庭も少なくないと思います。奨学金には返済が必要な貸付型と返済が不要の給付型の2種類がありますが、大半の学生が利用しているのは貸与型です。

各大学にも給付型奨学金や授業料免除の制度は多くありますが、(特に私大は)あくまでも優秀な生徒を対象とするため、経済的に厳しい母子家庭の子どもを優遇しているわけではありません。
ただ、最近では、各大学だけでなく民間団体や公益団体などでも給付型奨学金を出すところが増えてきています。

これらを活用する場合は少しでも早く情報収集し、給付条件を確認した上で準備を進めてください。
いずれにしても、大学の給付型奨学金を獲得するにはかなり高い学力(地域でトップの高校偏差値レベル)が要求されます。準備に「早すぎる」ことはありません。

給付型奨学金を3例ご紹介します。

公益財団法人 電通育英会

指定の公立高校から指定の大学・大学院に進学する、経済的理由により修学困難で優秀な学生が対象。
高校予約型奨学制度。最長4年間、月額6万円を奨学金として給付。また奨学金とは別に、内定者には受験などの助成金として10万円、さらに入学一時金として、30万円を最初の奨学金給付に合わせて1回給付。

JT国内大学奨学金

指定の公立高校から指定の大学に進学する、経済的理由により修学困難で優秀な学生が対象。
募集は高校推薦と大学推薦がある。奨学生内定者には大学合否を問わず、受験費用として一時金30万円を給付。授業料相当の年額54万円、月額奨学金として自宅生には月額5万円、自宅外生には月額10万円を給付(高校推薦の場合)。

日本学生支援機構/給付型奨学金

2017年3月、日本学生支援機構法の改正により、国による給付型奨学金制度を日本で初めて導入。
対象は、児童養護施設入所者および住民税非課税世帯の子ども。各高校から1名を推薦。
初年度の学力および資質基準は「評定平均4.3以上、A判定のみ」と確認。月額2~4万円を給付。

公益財団法人 電通育英会
http://www.dentsu-ikueikai.or.jp/

JT国内大学奨学金
https://www.jti.co.jp/csr/contribution/social/japan_scholarship/index.html

日本学生支援機構 奨学金の制度(給付型)
http://www.jasso.go.jp/shogakukin/kyufu/

まとめ

約半数の家庭が貧困状態にありながら、声も上げずに、ただ必死で日々を生きている私たちシングルマザー。

夫と別れる選択をしたのも、未婚で子どもを生んだのも自己責任だ。そのような世の中の風潮があるから、多くの女性が家事も育児も仕事もすべて自分一人で抱え込み「貧しい」ことは「恥ずかしい」ことだと貧困状態をひた隠して生きているのです。

しかし、シングルマザー家庭の生活苦は私たちの努力不足ではなく、日本社会の制度上の問題でもあります。「必死で働いても貧困から抜け出せないのなら、私たちはいったいどうすればいいのか!」そう叫びたくなりますね。

貧困を生み出す社会のしくみをよく理解し、決して自分を責めないでください。そして、常日頃から周りの人や支援制度に大いに頼っていきましょう。シングルマザーの横のつながりを強くすることも、世の中を変える大きな力になると思います。

この記事が、読者のみなさまの生活に少しでもお役に立てたら幸いです。