シングルマザー(母子家庭)の暮らしを「ちょっとずつ」良くする

母子保健の役割って?子育てに役立つ事業内容も知りたい!

ライター 加藤良子

小学生の一人娘と完全に自分のことを人間だと思っているワンコと気ままな二人+一匹暮らしを楽しんでいるシングルマザーです。将来は日本を飛び出して二人で暖かい所に住むのが夢!シングルマザーならではの喜びや悩みを皆様と共有していきたいと思います

Photo ryoko kato

No109s

「母子保健」って聞くことはあるけれど、「一体どんな保険なの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか?

母子保健はその名の通り母親と子どもに関するサービスであり、今の日本ではごく当前のことになりつつあります。また、これまで母子保健は乳幼児の死亡率を減少させることに大きく貢献してきました。

今回は、母親と子どもたちが健康な生活を送るために非常に重要な役割を果たす「母子保健」についてお伝えします。

母子保健とは 

日本では、妊娠すると母子手帳が交付されます。出産までの間、妊婦健診や母親学級などに参加することができ、出産後は定期健康診断や育児中の悩みなどを育児相談で相談することができます。

当然のサービスとして行われていると思われがちですが、このように母子の健康をサポートする環境が整ったのも「母子保健」が制定されたからこそなのです。

母子保健はいつから始まった?

昭和初期までの日本は、出産に伴う疾患や障がいによる流産や早産、死産、また肺炎などの感染症によって妊婦や乳幼児が亡くなるケースが現在よりもはるかに高い状態となっていました。

そのような背景のもと、子どもたちの大切な命を守るために、昭和12年に(旧)保健所法が制定されました。当時は結核で亡くなる場合が多かったため、結核対策を中心として妊婦や乳幼児への保健指導が中心でした。

戦後、児童の生活環境に関する社会問題の増加に伴い、昭和22年に児童の健全な育成を目的とした「児童福祉法」が制定されました。

戦時中に実施されていた「妊産婦手帳」も「母子手帳(母子健康手帳)」として引き継がれました。妊婦期から出産期だけではなく小児期までの項目がプラスされ、内容も充実しました。

それ以降、母子に関する様々な制度が定められ、昭和40年に「母子保健法」が制定されました。

以前は思春期や更年期の女性はこの保険の対象外でしたが、子どもが健全に育つための基本となる「母性」を保護するという目的で、妊娠する可能性がある全ての女性が対象となりました。

さらに平成9年には母子保健の実施は市町村が主体となることが決まり、各自治体によるサービスが提供されています。

多岐に渡る母子保健のサービスは、思春期の母性に目覚める時期から幼児の健全な育成まで一貫して行われています。

母子保健を取り巻く状況 

母子保健法が制定されて様々な施策が実施された効果もあり、死亡率が高かった日本の母子健康水準は世界でもトップレベルまでになりました。

ただ、昭和初期に母子保健法が制定される発端となった問題は改善されたものの、現段階では新たな問題が生じています。

少子高齢化

「少子化」の原因としては、経済的な問題などで子どもを持たない世帯が増えた、結婚をしない人が増加した、ということが考えられています。

少子高齢化が進むことによって経済的な問題や未来の子どもたちが抱える負担などが懸念される中で、より充実させるために各自治体が母子保健を管轄するようになりました。

自治体によって独自の政策も行っています。筆者の居住地域では不妊治療費の助成制度が設けられています。「3人目を出産した場合は100万円支給」という自治体もあるようです。

子育ての孤立化

本来ならば赤ちゃんが産まれて幸せいっぱいのはずですが……、子育て中に孤独を感じるという女性も非常に多いようです。

この背景には複雑な要因が考えられます。

まず、家事と育児の分担の度合いが圧倒的に女性の方が高いということです。

イクメンという言葉が出てきたように日本でも家事や育児に積極的な男性が増えてきましたが、そのような言葉が注目されること自体特別扱いされているということですよね。

核家族化が進み、子どもを預ける場所がない、何でも一人で抱え込んでしまうという問題も起こっています。

近所のおじさんやおばさんが子どもの面倒を見てくれる環境は今では珍しい光景です。頼れる親や親戚も近くにいない状況では、ただでさえ不安を感じやすくナーバスになる産後は余計に孤独を感じやすくなるのでしょう。

夜泣きやイヤイヤ期などに直面しても相談できる相手がいない、というのも大きな原因のようです。

そういったママさんのために地域で「子育てサロン」などの育児相談を行う場所を提供しているのも母子保健です。

児童虐待の増加

厚生労働省による発表では平成28年度に全国の児童相談所が対応した虐待件数は122,578件(速報値)と報告されています。

虐待件数は年々増え続け、毎年過去最大件数を更新しています。テレビでも度々耳を疑うような虐待のニュースが報道されていますよね。

児童虐待件数の増加の原因には虐待と捉えられる行動や言動の範囲が広がったことや、今まではうやむやにされていた虐待が明るみに出たこと、医者や教師など第三者の通報義務が厳しくなったことが挙げられます。

家族化が進んで親だけで子育てを行っている点や、ひとり親家庭で育児の負担が大きいという点も要因になっているのではないでしょうか?

母子保健では各自治体で児童虐待を未然に防ぐため、乳児家庭を全戸訪問するサービスや、育児相談、地域と市民が繋がることで妊娠時期から子育て時期に渡る支援などを行っています。

低出生体重児の増加

「生まれた時の体重が2,500g未満」の赤ちゃんが「低出生体重児」に分類されます。その中でも出生体重が1,500g未満の場合「極低出生体重児」、1,000g未満では「超低出生体重児」と呼ばれています。

日本では少子化が進み出生数が減少傾向にあるものの、低出生体重児の割合は年々増加傾向にあります。経済的に発展していて、医療レベルも高い国で低出生体重児が増加するのは世界的にみても珍しい傾向のようです。

厚生労働省の報告によると、平成19年度の出生数は1,089,818人、低出生体重児の割合は9.6%。

昭和60年度の出生数は1,431,577人、低出生体重児の割合は5.5%でしたが、それ以降、徐々に増加減少の割合が逆転し始めました。

低出生体重児になる原因には妊娠中の発育が不十分であることや、早産の増加、妊娠中の飲酒と喫煙が挙げられます。妊娠時期の高齢化や妊娠前のダイエットや生活習慣も大きく関係していると言われています。

母子保健では低出生体重児を減少させる取り組みとして、「母子手帳」を発行する際の妊婦面談や、産後の生活習慣病予防を視野に入れた食生活指導などを行っています。

小児在宅医療支援体制の必要性

医療技術の高度化に伴って急増したのが未熟児や医療依存度が高い病弱な子どもや重症児です。救える命が増えた分、病気を持って生まれてくる子どもが増えているということになります。

大きな病院ではNICU(新生児集中治療室)が満床で救急の妊婦を受け入れることができない状態である場合もあります。

医療デバイスを使用していたり、呼吸器を装着していたりする場合は24時間看護が必要になるため、家族だけで対応するには厳しい場合もあります。

母子保健では、地域のつながりや多職種との連携によってケアを行う体制作りにも関わっています。
ただし、現状では医療と福祉の連携がうまく取れているとは言えず、小児在宅医療に関しての支援にはまだまだ課題も残されています。

問題を解消するためには多くの問題をクリアする必要があり、厚生労働省は小児在宅医療を支援するためのモデルケースなどを提案しています。

厚生労働省 平成28年度児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値>
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000174478.pdf

厚生労働省 出生数及び出生時体重2,500g未満の出生割合の推移
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/07/dl/s0708-16f_0005.pdf

厚生労働省 小児在宅医療の現状と問題点の共有 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000114482.pdf

自治体の母子保健事業

各自治体が母子保健事業として行っているサービスは色々ありますが、代表的なものをいくつかピックアップしてみました。

母子健康手帳(母子手帳)の交付

妊娠の届け出をすると各市町村から全員に支給されるのが「母子健康手帳」です。妊娠中の記録から子どもが産まれてからの健診結果、予防接種の記録などが全て記載されているので、母親にとっては非常に便利な手帳です。

個人的には育児に関する情報やお住まいの地域の子育てに関する情報が記載されているのが非常に役立ちました。

幼児(1歳6か月児、3歳児)健康診査

各市町村には1歳6か月と3歳児の幼児健診が義務付けられています。それ以外にも各自治体独自で1歳健診、2歳健診などが行われている場合もあります。

医師による内診や保健士、栄養士、助産婦などによる個別指導、聴覚や視覚の簡単なテストが行われることもあります。保健所などでの集団検診になるので、同じ年の子を持つママとの交流の場にもなりますね。

妊産婦と乳幼児の訪問指導

各市町村では初産で育児に不慣れな母親や未熟児を育てる母親のために、保健士や助産婦の訪問サービスを行っています。

訪問サービスでは、妊産婦の健康管理や育児に関する疑問に応えたり、授乳法などについての指導を行っています。

2007年には厚生労働省が「こんにちは赤ちゃん事業」として、生後4か月までの乳児がいる全家庭を訪問するサービスが始まりました。

それに対して都道府県では「小児慢性特定疾患」を持つ児童宅を訪問して、家庭看護の指導や福祉制度の紹介をしています。

その他

その他、市町村などの自治体が必要に応じて行うサービスには、以下のようなものがあります。

  • 妊産婦の健康診査
  • 低出生体重児への支援
  • 未熟児養育医療の現物給付
  • 母子健康センターの設置

母子保健の関連施策

厚生労働省が主体となって行っている事業もいくつかあります。

健やか親子21

母子の健康水準を向上させるために、国民全員が協力して子どもが健やかに育つ社会を作るための運動が「健やか親子21」です。

「妊産婦から乳幼児に対する保健対策」「学童期や思春期から成人期に向けての保健対策」「子どもの健やかな成長を見守る地域づくり」を基盤課題として、それぞれに対する課題をクリアするための目標を定めます。

5年後10年後の結果から改善された点や悪化した点が浮き彫りになるので、さらなる改善策を打ち出して未来につなげることができます。

なお、第1次計画は平成13~26年までとなっていて、悪化した指標として「10代の自殺率」「全出生数中の低出生体重児の割合」が挙げられています。

子育て世代包括支援センター

保健士や助産婦が在中する施設で、妊娠から出産、子育てまで幅広い相談が同じ場所で一貫してできるメリットがあります。

特に初めての妊娠、出産の場合は何か困ったことがあればここに尋ねればよいという安心感があり、近くに相談できる相手がいない女性にとっては非常に頼もしい場所です。

各自治体での実情を踏まえて平成32年度を目途に全国展開を目指す予定になっています。

各自治体での事例

新潟県長岡市

  • 産後ケアコーディネーターの配置
  • 妊娠届出時に助産婦や保健士が面談を行い、全ての妊婦の状況を把握
  • 産科医療機関と関係者の定期的な会議による情報共有
  • 妊産婦に対するきめ細かい支援(産後デイケア施設、産後ケア訪問)
  • 子育ての駅に常駐している保育士や子育てコンシェルジュによる子育て相談

三重県名張市

  • チャイルドパートナー(身近な相談員)を設置
  • 子育てプラン(支援計画なども指導)
  • 生後2週間目全戸電話相談
  • 産前産後のケア体制(産婦乳腺炎予防ケア、おっぱいケア、産後ママとベビーのためのお泊りケアなど)
  • ライフプラン教育(性教育、生活習慣病予防教育)

産前・産後サポート事業

妊産婦やその家族を対象とした支援事業で、妊娠、出産、子育ての悩みや不安に対して助産師や保健師を始め研修を受けた子育て経験者、シニア世代、愛育班員(母子に関わる地域の人的資源)、心理カウンセラーなどが様々な形で支援を行うことを目的としています。

実施の方法も多用で、家庭訪問、実施場所に来所してもらう、集団での相談やグループワーク、個別相談、電話やメールによる相談などがあります。

各自治体での事例

大阪府堺市

  • パパの育児教室
  • 子育てアドバイザーによる訪問相談、さかい子育てスマイル訪問
  • 助産婦による育児ひろば
  • キッズサポートセンター開設

静岡県伊東市

  • 参加型:子育てサロン開設(シニア世代や子育て経験者による相談から家事支援まで幅広いサービス)
  • 訪問型:家庭訪問型子育て事業(産前産後の肉体的、精神的な悩み相談、乳幼児への遊びの提供や母親に対するケア)

健やか親子21
http://sukoyaka21.jp/

厚生労働省 平成28年度子育て世代包括支援センター事例集
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/H28houkatusiennsennta-zireisyu.pdf

厚生労働省 平成28年度産前・産後サポート事業事例集
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/H28sangokeazireisyu_1.pdf

まとめ

少子化が進む日本では国や各地方自治体が母子の生活をよりよくしようと様々なサービスを提供しています。筆者は実家を離れて子育てをしたので、子どもの遊び場を提供してくれたサポートセンターの存在には非常に救われました。

もし子育てに孤独感や不安を感じているなら、母子保健のサービスに頼ってみてはいかがでしょうか? 母子保健に救われた経験のあるシングルマザーの皆さん、是非あなたの体験談も聞かせていただけると嬉しいです。