シングルマザー(母子家庭)の暮らしを「ちょっとずつ」良くする

養育費とは?きちんと受け取り続けるための基礎知識

ライター 小山智子

夫の借金、調停離婚、母の介護を経験したシングルマザー。離婚後、専業主婦から不動産会社で営業に従事。自身の経験と不動産の悩みを抱える方を見てきたことからファイナンシャルプランナーの勉強を始める。現在は、離婚で悩んでいる方やシングルマザーからの個別相談、不動産の相談を中心に企業主催のマネー講座、執筆活動をしています。

Photo koyama tomoko

226314 main

養育費について「きちんと払ってくれるのか?」「支払いが滞ったらどうしたらいいの?」など色々な悩みがあると思います。養育費は、子どもが健やかな成長をしていくために子どもの生活を支える大切な費用です。

今回は、離婚後に養育費をきちんと受け取れるように、ママが事前に知っておくべき基礎知識をお伝えします。

養育費とは

未成年の子どもを監護・養育するために必要な費用が養育費です。

養育費には、経済的・社会的に自立をしていない子どもに必要な衣食住にかかわる費用、教育費や医療費なども含まれると考えられています。

離婚により親権者ではなくなった、子どもと離れて暮らすことになったということもありますが、子どもの親であることに変わりありません。

子どもが父と母どちらと暮らしても同じような生活水準を保てるように、経済的な責任を果たし子どもの成長を支えることはとても重要なことです。

養育費の取り決め方法

厚生労働省の調べによると、日本の離婚の約90%を占める協議離婚ではその他の離婚方法と比べて養育費の「取り決めをしている」割合が低くなっています。

その理由については、「相手に支払う意思や能力がないと思った」とした母親が最も多く、「相手と関わりたくない」「相手に養育費を請求できるとは思わなかった」と続きます。

女性の社会進出が進んだと言われていますが、離婚後に金銭的な悩みを抱える女性は多くいます。養育費の取り決め方法を確認し、きちんと取り決めるようにしておきましょう。

負担割合は?

離婚の話し合いの時に、子育てにかかる費用をどのように分担していくのか、父親と母親の収入により負担割合を考慮しながら話し合いで決めます。

子育てにかかる費用の細目の全てに対して負担割合を計算するのではなく、子どものために親として何ができるのかを基本に分担していくとよいですね。

子育てにかかる費用とは?

子育てにかかる費用としては、教育に関連する費用(学校にかかるお金や受験費用、お稽古、学習塾など)と、生活に関する費用(食費や衣服代、医療、お小遣い、おもちゃ代、文具代、保育園代、ベビーシッター代、レジャー費用など)があります。

内閣府の「平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査」によると、0歳から中学3年生まで全対象者の1年間にかかる平均費用は1,168,935円となっています(出産準備費、出産関連費除く)。

[就学区分別に集計した第1子一人当たりの費目別年間子育て費用額(対象者全体平均)]

衣類・服飾雑貨費 69,525円
食費 255,718円
生活用品費 100,889円
医療費 18,004円
保育費 108,432円
学校外教育費 92,823円
学校外活動費 60,365円
子どもの携帯電話料金 5,277円
おこづかい 10,462円
お祝い行事関係費 39,913
子どものための預貯金・保険 178,560円
レジャー・旅行費 142,760円
子育て費用総額(出産準備費、出産関連費除く) 1,168,935円

子育てには様々な費用が必要となることがわかります。

全ての項目が養育費の算定に入るとは限りませんが、リアルな感覚を持って夫婦間の話合いを進めるためにも、目安として知っておくといいでしょう。

話合いで決まったことは公的な書面に残す

協議離婚の場合、慰謝料や養育費、財産分与などの条件について、夫婦が自分たちで話し合い、届け出も自分たちで行うことになります。

ただ、条件の取り決めをしていても、養育費の不払いなど約束が守られないことも多くあります。特に養育費に関しては80%の人が「受け取っていない」というデータもあります。

養育費の不払いを避けるためにも、離婚時に取り決めたことは公正証書として残しておくことが重要となってきます。

公正証書は法務大臣が任命する公証人が法律に従って作成する公文書です。
基本的には夫婦一緒に公証役場を訪ね、公正証書を作成しますが、弁護士などに代理作成してもらうことも可能です。詳細はお住まいの近くの公証役場にお尋ねください。

協議離婚以外の方法

夫婦二人の話し合いで決着がつかない場合には、家庭裁判所の調停手続や裁判離婚を利用することができます。なお、日本では調停前置主義が取られているので、「①調停 → ②裁判」という流れになります。

調停離婚  

離婚に関して、夫婦間で話し合いができない、あるいは話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に離婚調停を申立て、夫婦が離婚に合意すると離婚が成立します。

調停手続では離婚そのものだけでなく、親権や面会交流、養育費、財産分与や年金分割の割合、慰謝料などについても一緒に話し合うことができます。

調停では、裁判官一人と民間から選ばれた調停委員二人以上で構成される調停委員会が、当事者双方の事情や意見を聴くなどして、双方が納得して問題を解決できるよう公平な立場から助言などをします。

裁判離婚

離婚の調停または審判でも離婚にいたらなかった場合、離婚したい方が訴えると離婚訴訟となります。最終的に離婚に何らかの決着が付くことになります。

平成23年度全国母子世帯等調査結果報告
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-katei/boshi-setai_h23/

e-Stat 政府統計の総合窓口 人口動態調査
https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&listID=000001190827&requestSender=dsearch

内閣府 平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/research/cyousa21/net_hiyo/mokuji_pdf.html

裁判所 夫婦関係調整調停(離婚)
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_01/index.html

裁判所 離婚
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_08_01/index.html

裁判所 調停手続一般
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_03/index.html

養育費の算定方法

裁判所のWEBサイトには、家庭裁判所で参考資料として活用されている「養育費・婚姻費用算定表」のPDF資料があり、誰でもダウンロードすることができます。

算定表を利用する場合は、「子どもの人数と年齢にあった表」を探した後、「夫婦の働き方と年収」を確認し、養育費を調べるという手順になります。

STEP1 子どもの人数と年齢にあった表を探す

「養育費・婚姻費用算定表」には「養育費」と「婚姻費用」の表が記載されています。「子どもの年齢」「子どもの人数」によっても異なるので、表右上のクレジットを利用して「ご自身の家族構成に合った養育費の表」を探しましょう。

[参考:表の種類]
表1 養育費・子一人表(子0~14歳)
表2 養育費・子一人表(子15~19歳)
表3 養育費・子二人表(第1子及び第2子0~14歳) など

STEP2 支払う人と受ける人の働き方と年収を確認する

表の縦軸は義務者(養育費を支払う人)の年収、横軸は権利者(支払を受ける人)の年収を示しています。

縦軸の左欄と横軸の下欄の年収は給与所得者の年収、縦軸の右欄と横軸の上欄の年収は自営業者の年収が記載されています。

年収の考え方は次の通りです。

  • 給与所得者の場合:源泉徴収票の「支払金額」(控除されていない金額)
  • 自営業者の場合:確定申告書の「課税される所得金額」

出典元:裁判所 養育費・婚姻費用算定表
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

養育費の支払いが滞った時の対処法

養育費は子どもを育てていくのに大切な費用です。支払いがスムーズに行われない際の対処方法をお伝えします。

相手が働けない状況にある場合や、全くお金がない場合など以外でしたら、給与や預貯金を差し押さえることで養育費を回収することができる手続きがあります。

一般的な連絡手段で伝える

養育費の支払の滞りが起きたら、まずはメール(パソコン、携帯など)、電話、手紙などを使い連絡を取りましょう。養育費の支払いを求める際には「○○日までに」と期限を区切ることが重要になります。

内容証明郵便で伝える

メール、電話、手紙などの連絡手段から支払いを求めても、返事がない、支払いがないといった場合は内容証明郵便を利用して伝えましょう。

内容証明郵便とは?

内容証明郵便は、郵便局が発送した郵便について証明をしてくれる方法です。
証明をする内容について

  • いつ(郵便の発送日)
  • 誰から誰に対しての郵便
  • どのような内容の郵便を送ったのか

について証明をしてくれます。支払いの意思を伝えた証拠として有効ですね。
なお、「相手がきちんと受け取った」ことも重要になるので、「配達証明付内容証明郵便」にしましょう。

法的手段

自分自身で連絡を取っても、養育費の支払いが行われない場合は法的な手段を考えます。
離婚のときに決めた条件をどのような書類で残しているかで、養育費の不払いが起きた時の手順が変わります。

1.公的文書を作成していない場合

離婚の時に口約束だけという場合、条件を書いた文章や離婚協議書はあるが公正証書を作成していないという場合は、直ちに強制執行をすることができません。まずは、家庭裁判所へ養育費について調停の申立てをすることが必要です。

2.公正証書がある場合

協議離婚で離婚の取り決めについて「強制執行認諾文言付公正証書」を作成している場合は家庭裁判所の調停や裁判を経ずに、直ちに強制執行をすることが可能です。
強制執行認諾の取り決めがされていない公正証書の場合は家庭裁判所へ養育費について調停の申立てをすることが必要です。

3.調停調書がある場合

家庭裁判所を利用した離婚の場合は、離婚成立時に裁判所から「調停調書」が作成されます。調停調書内で決められたことが守られない場合、以下の方法のいずれかを選ぶことができます。

  • 履行勧告
  • 履行命令
  • 強制執行

詳細はお近くの家庭裁判所へお尋ねください。

郵便局 内容証明
http://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/index.html

厚生労働省 ひとり親家庭の支援について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/shien.pdf

裁判所 履行勧告手続等
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_05/index.html

法テラス 養育費のFAQ
http://www.houterasu.or.jp/service/fuufu_danjo_trouble/youikuhi/faq1.html

養育に関する素朴な疑問

Q.離婚後でも養育費の取り決めをすることはできるの?

A.離婚した後でも、養育費を取り決めることができます。

もし、離婚の際の話し合いで「養育費を支払わない」「養育費を受け取らない」といった約束をしていても、子どもが養育費の支払を受ける権利を失うわけではありません。事情に応じて、改めて養育費を取り決めることができます。

Q.養育費はいつまでもらえるの?

A.養育費は成人までとするのが一般的ですが、大学生や病気で自立できない子どもなど、状況によっては成人後の養育費が認められることがあります。大学生の場合、親の資力や教育方針などから総合的に判断されるのが実情です。

Q.養育費とは別に子どもの学費をもらうことはできるの?

A.話し合いのときに、子どもの入学時、病気をした時など特別な時に養育費とは別に請求できるように決めておきましょう。

Q.養育費は増額できるの?

A.養育費は、最初に決めたときに比べて生活状況が大きく変化したなど「予想しない事情の変更」が認められる場合には再度決め直すことができます。ただし、子どもの教育費などが大幅に増加したとしても相手の収入が増えていなければ現実には増額が難しい場合があるでしょう。

Q.養育費が減額されることもあるの?

A.離婚時にある程度予測される範囲内での状況の変化の減額は認められませんが、相手が病気や失職などで収入が少なくなった場合は、減額に応じなければならないこともあります。

Q.(自分=シングルマザーが)再婚した場合はどうなるの?

A.再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、再婚相手(養親)が第一次的な養育費の支払義務を負担することになりますので、減額請求が認められる可能性があります。

出典元:養育費相談支援センター Q&A 
http://www.youikuhi-soudan.jp/qanda.html#cate04a

法テラス 養育費のFAQ 
http://www.houterasu.or.jp/service/fuufu_danjo_trouble/youikuhi/faq2.html

裁判所 養育費 手続説明書面
http://www.courts.go.jp/osaka/saiban/l3/l4/Vcms4_00000466.html

裁判所 裁判手続 家事事件Q&A
http://www.courts.go.jp/saiban/qa_kazi/index.html

最後に

養育費は、民法の条文に定められている子どもの権利です。養育費について離婚時に十分話し合うことが大切ですが、夫婦二人では解決できないことも多くあります。

また、離婚後に新たな話し合い事項が出てくることも考えられます。家庭裁判所は離婚のときだけではなく、離婚後の話合いの場として活用できますので、必要に応じて家庭裁判所の利用も検討しましょう。

この記事が参考になった場合はシェアをお願いいたします。