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親権って何?何故、親権争いになるの?やっぱり親権は取っておいた方がいい?

ライター 野崎陽子

大学生の娘がいるシングルマザーです。フリーのライター・編集者として出版広告分野で20年以上活動し、子育てや遊び場などのテーマで著書も10数冊。フリーランスを目指すママたちのお手伝いをしています。

Photo yoko nozaki

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親権といえば、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが、元夫ブラッド・ピットとの間で、養子を含めた計6人の子どもの親権を争い、泥沼の司法闘争が繰り広げられたことは記憶に新しいと思います。

離婚騒動の発覚から約3ヵ月、裁判所は、妻アンジー側に単独で親権を与えるとの判断を下しました。この一件で「親権」について改めて考えた方も多いのではないでしょうか。

何ごともなければ、子どもが20歳になるまでは父親と母親が共同で親権者になるため、普段は親権について意識することもないでしょう。

ところが、いざ離婚となった際に夫婦間でとくに揉める要因となるのが、子どもの親権です。

親権って何?

親権とは、未成年の子どもを養育監護し、その財産を管理する権利や義務のこと。子どもが誕生した時点で両親に対して親権は発生し、のちに何の変更もなければ子どもが20歳になると同時に消滅します。

夫婦が離婚する際に未成年の子どもがいれば、夫か妻のいずれかが親権者になりますが、この際に熾烈な争いが生じるケースは少なくありません。

協議離婚の場合は話し合いで親権を決めますが、折り合いがつかない場合は家庭裁判所に調停を申し立て、裁判所を通じて親権者を指定してもらいます。

判断基準としては「監護の継続性」「母性の優先」「子の意思の尊重」「離婚に関しての有責性」などがありますが、ほとんどの場合、子どもを引き取って育てる方が親権者となるようです。

いずれにしても親の都合ではなく、子どもの福祉(利益)を最大限に考えた上で親権が決められるべきでしょう。

親権がなくなるとどうなるの?

親権者イコール保護者ですから、親権がなくなると、たとえ生みの親であっても保護者としての義務や権利はなくなります。

現状では、約8割は母親が親権を取っています。とくに15歳未満の子どもには、成長する上で母親の存在が大きいため「母親優先の原則」がはたらくからです。

しかし、母親の健康状態や生活態度に何らかの問題があり、裁判所や周囲が「子どもの成長や養育に悪影響がある」と判断すれば、父親が親権を取ることになります。

こうして父親が子どもを引き取るケースは年々増えていて、今では「母親優先の原則」も崩れつつあるようです。

実際、「元夫(親権者)が子どもに会わせてくれない」といった親権者でない母親たちの声も珍しくありません。

たとえ親権者でなくても(面会を求める親に問題がない限り)、子どもに面会する権利は認められているので、そのような場合は家庭裁判所へ面会交流調停を申し立てることになります。

ただ、調停で合意しても「子どもが会いたがらない」との理由で面会を拒否される例も多いようです。

条文によれば、面会交流は努力義務であって罰則がないため強制力はありません。現在、超党派による「面会交流を促進する法案」を国会に提出する準備が進められています。

親権はやっぱり取っておいた方がいい?

離婚するときは必ず子どもの親権者をどちらがもつか決めなければなりません。ひとり親家庭の約8割は母親が親権を取っています。

特に子どもが小さければ小さいほど、家庭裁判所での親権争いについては「母親優先の原則」がはたらきます。たとえば、経済的な理由だけで夫よりも妻が不利になるとは限りません。夫が養育費を支払うことで、妻が親権をもつ例はたくさんあるからです。

親権は、子どもが20歳になれば自動的に消滅しますが、それでもわが子と生活を共にし、成長を見守ることは親として最高の喜び。「できれば親権を得たい!」という気持ちもよくわかります。

ごくまれに母親が親権を取れない、あるいは拒否することもあります。何らかの理由で親権を拒否したからといって、「母親として無責任」ということはありません。

ただし、親権を取らない場合は、親の扶養義務として養育費の支払いが発生することを知っておきましょう。

親権はどのように決める?

厚生労働省の調査「全国母子世帯等調査報告書」によると、1983年から2003年の20年間で、母子家庭が約52万世帯も増加。

少子化の影響を受けて「子どものいる世帯」の(全世帯に占める)割合は減少しているにもかかわらず、母子家庭はそれに反比例して数を伸ばしています。また、母子家庭全体の約9割は、死別ではなく離婚でひとり親になったとのデータもあります。

それだけ母子家庭の割合が増えている背景には、子どものいる家庭はおおむね離婚する際に妻が子ども引き取る(親権を取る)ということ。

大家族が当たり前だった戦後しばらくまでは、離婚すると嫁が家を追い出され、夫が親権をもつことが多かったようですが、時代は変わり、現在の親権者は「8割が母親」という統計値。親権がほしい父親にとっては不利な世の中となっています。

協議離婚で親権を決めるときに考慮したいことは?

協議離婚とは、夫婦で話し合って合意のもとで離婚届を出すというもの。離婚の約9割はこの協議離婚です。

話し合いがスムーズに進めば、時間も費用もかからずに離婚することができますが、その際に気を付けたいのは、取り決めを口約束だけにせず、署名と捺印をした離婚協議書を作成すること。

親権、養育費、財産分与、子どもとの面会交流などについて詳細を明記し、公正証書(公証役場で公証人が作成)にすることで、後々何らかのトラブルが生じた場合にこれを証拠として強制執行を申し立てることができるからです。引っ越し・退職・再婚など身辺に変化があった際には通知する旨も文書に記しておきましょう。

調停離婚になった場合はどうなる?

当人同士の話し合いで折り合いがつかず、互いを傷つけ合う状況が長引くようなら、第三者を交えた離婚調停に移ります。

ここで親権を争う場合、これまでどちらが主体的に子どもの面倒をみてきたか(継続性の原則)、親権者となる側の健康状態、子どもの年齢や意思、ひとり親になってからの子どもと一緒に過ごす時間の割合や経済力などが判断材料になります。

調停でも決着しなかった場合は裁判になりますが、その割合は全体の1%ほど。かなりレアなケースです。

一度決めた親権を変更するのは難しい

親権者の変更は、両者の話し合いではなく、家庭裁判所の調停を経て変更の可否が決まります。

「子どもと面会しているうちに、一緒に暮らしたくなった」というような親の都合による理由での変更はできません。

変更が認められるのは、長期入院や海外赴任、継母や継父との関係悪化など、親権者による養育が極めて難しくなったケースに限ります。

一度決めた親権者の変更は容易ではないことを理解しておきましょう。

親権者(財産管理権)と監護権者を分けるとは?

親権は、子どもの身の回りの世話や教育をする権利「身上監護権」と、子どもの財産を管理し法的手続きの代理をする権利「財産管理権」に分かれます。

一般的には親権者が両方の権利と義務を遂行しますが、熾烈な親権争いとなるのは主に「身上監護権」です。

離婚後の共同親権が許されていないわが国では、離婚する場合、父親と母親のどちらか一方が親権をもち、一方が親権を失うというかたちになります。

ただ、父親が財産管理者で母親が身上監督者というように役割を分担することも可能です。つまり、「父親が親権を取って母親が子どもと一緒に生活する」パターンです。

この場合のメリットは、親権争いを早期に決着し、子どもを引き取ることができる点です。養育費や子どもとの面会交流などの争点も、折り合いをつけやすくなります。

一方のデメリットは、子どもに関するさまざまな手続きにおいて書類上、親権者でなければ「保護者欄への署名」ができないことです。

子どもの手術や入院の際の同意書、事故に遭った際の損害賠償に関する書類など、緊急時への対応が難しくなります。

学校関係の重要書類もしかり。そのため、親権者である元夫と連絡を取る機会が増えることもストレスの要因になるかもしれません。

親権者の同意が必要なときにその都度話し合うという状況は、余計なトラブルを生じかねないので、親権者と監護者を分離する場合は、離婚後もしっかり協力して子育てしていく努力と覚悟が不可欠になります。

親権者を後から変更することは難しいため、離婚の際には子どもの利益を最大限に考慮して、親権者を慎重に検討するべきでしょう。

平成23年度全国母子世帯等調査結果報告
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-katei/boshi-setai_h23/