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母子支援員とは?どのような役割を担っているの?

ライター 野崎陽子

大学生の娘がいるシングルマザーです。フリーのライター・編集者として出版広告分野で20年以上活動し、子育てや遊び場などのテーマで著書も10数冊。フリーランスを目指すママたちのお手伝いをしています。

Photo yoko nozaki

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社会的に自立が困難な母子を保護し、生活や養育を支援しながら自立を促していく母子生活支援施設(旧・母子寮)。そして、入所者にとってのよき相談相手であり、よき理解者となるのが母子支援員です。

社会的意義が強くやり甲斐があり、人間力も試される母子支援員とはどのような仕事なのか、ご紹介していきましょう。

母子生活支援施設とは

母子生活支援施設とは、1947(昭和22)年に制定された児童福祉法に基づき、18歳未満の子どもとその母親がさまざまな支援を受けながら暮らす施設のこと。

戦災被害者の未亡人と子どもを保護する施設としてスタートし、のちには、夫との離婚や死別によって経済的困窮・養育不能に陥った母子家庭を受け入れるようになりました。

かつては「母子寮」と呼ばれていましたが、1998(平成10)年に「母子生活支援施設」へと名称が変更されました。

入所対象者

18歳未満の子どもを養育している母子家庭、あるいは何らかの事情で離婚届が出せず、母子家庭に準じる家庭の女性と子どもが入所対象です。特別な理由があれば、子どもが満20歳になるまで入所を継続できる場合もあります。

入所期間はおおむね2年間。この期間に、地域での自立した生活に向けて必要な支援を行います。

施設利用料は入居者の納税額(住民税や所得税)に応じて決まります。

入所のための手続き

入所申し込みについては、居住エリアを管轄する福祉事務所が窓口になります。

まずは担当職員が相談を受け、家族構成や生活状況、将来的な見通しなどを詳しくヒアリングし、さまざまな事情を考慮した上で入所の可否を判断します。

最近では経済的困窮だけでなく、DV(家庭内暴力)や借金、アルコール依存、知的障がいや精神障がいをもつケースも急増しています。

自分を取りまく状況を詳しく聞かれることに抵抗があるかもしれませんが、支援を受けるためにはきちんと質問に答える必要があります。尻込みをせず相談してみましょう。

施設の支援内容

母子生活支援施設では、基本的には入所者の生活状況に応じて、子どもの養育をはじめ住居の提供、就労など社会的自立に向けた支援を行います。

しかし、現在の母子家庭には貧困、DV、アルコール依存、精神障がいといったさまざまな問題があり、ひと口に「生活支援」といってもその内容は幅広いもの。どのような支援が必要か、入居時には母親と職員で相談しながら「自立支援計画」を作成します。

運営主体

母子生活支援施設の設立・運営に関しては、

  • 自治体が設立・運営(公設公営)
  • 自治体が設立し民間に運営を委託(公設民営)
  • 社会福祉法人が設立・運営(民設民営)

の大きく三つに分かれます。

施設数

全国にある母子生活支援施設は2014年度で240施設(全国母子生活支援施設協議会の調べ)。1996年度の307施設から大きく減少しています。

近年は自治体が設立・運営する公設公営の施設に関して、老朽化などの問題から閉鎖や解体が相次ぎ、その後は民営(社会福祉法人を含む)にシフトする傾向があります。

母子支援員とは

母子生活支援施設には、施設長をはじめ少年指導員、保育士、心理士などのさまざまな職種のスタッフがいます。

その中で、入所者と一緒に「自立支援計画」を作成し、ときには育児や家事をサポートし、ときには相談相手や心の支えになりながら入居者の生活を見守り支援するという重要な役目を担うのが「母子支援員」です。

仕事内容

母子支援員の仕事内容は多岐にわたりますが、基本的には「自立支援計画」にもとづいた支援を行っていきます。

家事や育児といった生活面でのサポートのほか、施設入居に関する書類上の手続き、生活保護の申請、親権や養育費など離婚にまつわる法的手続きに関しても、福祉事務所と連携しながら必要に応じて支援します。

母子の中には精神的ダメージを負っている人、金銭的なトラブルを抱えている人、夫の暴力から逃げてきて保護が必要な人なども少なくありません。それぞれのケースに応じて心のケアを行いながら、個別に支援していく必要があります。

また、孤立している母子に関しては、親族をはじめ周囲との人間関係を回復させるための対策を講じることもあります。

母子支援員の経歴(資格)は?

母子支援員は国家資格ではありませんが、求人の際には保育士や社会福祉士などの資格をもっていること(厚生労働大臣が指定する児童福祉施設職員の養成学校を卒業した者)が条件になります。

つまり、これらの受験資格が得られる大学・短大・専門学校・通信教育など専門機関で学ぶことが母子支援員への道につながるのです。
もしくは高校卒業後、児童福祉事業に2年以上従事した経歴があれば、求人の応募条件に該当することになります。

公設公営の施設へ就職を希望する場合は、地方公務員試験に合格することが必要ですが、地方公務員になったからといって希望通りに母子生活支援施設へ配属されるとは限りません。

基本的にはどの施設も少人数で運営しており、職員の入れ替えも少ないことから、母子支援員になりたい場合は応募条件をクリアした上で、自治体や施設に直接問い合わせるなど積極的に動くことが必要になります。

母子支援員は母子・父子自立支援員とは異なる職種

母子および寡婦福祉法で定めた「母子相談員」の名称が、2001(平成13)年の法改正により「母子自立支援員」に変更され、さらにその後、2014(平成26)年に「母子・父子自立支援員」に改称されました。

母子支援員の職場が母子生活支援施設であるのに対し、母子・父子自立支援員の職場は、各都道府県や市区町村で設置している福祉事務所になります。

両者とも「母子家庭への支援」を目的としていますが、母子・父子自立支援員は、母子寡婦福祉法に基づいた生活レベルや職業能力向上など自立に必要な相談や支援が中心となります。たとえば、母子寡婦福祉資金貸し付けの相談指導も支援の一つです。

一方の母子生活支援施設では、着の身着のままで夫から逃げてきた母子の保護も行います。

暴力の後遺症からうつ症状やPTSD(心的外傷後ストレス障がい)などを発症した入居者も多く、そういったケースでの生活や養育の支援は、ゼロよりもマイナスからのスタートになります。

極めて弱い立場の母子に対し、社会で生きていくための基盤づくりをすることが母子支援員の役目なのです。

母子生活支援施設の課題

昨今の母子家庭が抱えている問題は貧困(経済的困窮)だけでなく、借金、アルコール依存、精神疾患、DV被害、ネグレクト、児童虐待など多岐にわたるため、職員の負担がどんどん膨らんでいます。

それでも母子生活支援施設の多くは国からの補助金で運営していくしかなく、人員を増やすことは難しいのが現状です。

特に知的障がいや精神障がいをもつ母親は、自分だけでは生活や育児が難しく、児童虐待やネグレクトの怖れがあるケースでは24時間の見守りが必要になることもあるでしょう。

このような様々な課題に対応するためには、職員の数を増やすことはもちろん、福祉事務所や学校、病院、弁護士、児童相談所などの関係機関や専門家との連携が不可欠ですが、そのような協力体制も十分ではないようです。

さらに、施設の老朽化の問題が追い打ちをかけます。特に公設公営の築年数が古い施設では部屋が狭く、トイレや浴室が共同利用のところも少なくありません。

集団生活のルールが守られず、入居者同士のトラブルに発展してしまうこともあります。プライバシーが守られない住環境は子どもを育てる上で好ましいとはいえません。

現場のニーズを細やかにくみ取り、安心できる落ち着いた住環境を整えることは容易ではないでしょう。このように母子生活支援施設の改善すべき点は多くあります。

子どもの将来を考え、妥協することなく理想的な養育環境を追求してほしいと願います。

社会福祉法人 全国社会福祉協議会・全国母子生活支援施設協議会
http://zenbokyou.jp/